Songmash: マッシュアップ音楽の創作支援サービス

後藤 真孝, 川崎 裕太, Matthew Davies

産業技術総合研究所

Songmash(ソングマッシュ)とは

マッシュアップ音楽の創作支援サービス Songmash

(http://songmash.jp) [α版を試験公開中]

  • 音楽を混ぜ合わせて楽しむことができるサービス
  • 複数の異なる楽曲を巧みに混ぜ合わせて自然に聞こえるように
    音楽を制作する「マッシュアップ」と呼ばれる音楽制作手法を支援
  • ピアプロ、SoundCloudに対応
  • 8千曲以上を自動解析済み(閲覧時の音楽は元のサイト上で再生)
  • 既存のコンテンツ群の力を借りた創作が可能になる

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マッシュアップ音楽の創作方法

  • 入力楽曲(既存楽曲)に他の楽曲の断片を重ね合わせて出力楽曲を得る
  • コード進行が調和してテンポが同期するように楽曲の断片を加工
    • 時間長を変えずに音高変更(ピッチシフト)
    • 音高を変えずに時間伸縮(タイムストレッチ)
  • 区間毎に多様な楽曲から断片が次々に選ばれて同時再生される

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Songmashの様々な機能

マッシュアップの自動生成機能

  • ユーザが好きな楽曲を選ぶと自動的にマッシュアップが生成される

マッシュアップの編集機能 (自分好みのマッシュアップの創作支援)

  • 自動生成結果で変えたい箇所を楽曲候補から選択して置き換えられる
  • どの候補がどの時刻に配置可能かは自動的に決定される
  • 各楽曲断片のフェードイン・フェードアウトの指定が可能

マッシュアップ作品の公開機能

  • 編集したマッシュアップ作品を公開することができる
  • 公開されたマッシュアップを誰でも楽しめ、派生作品を制作できる
  • URLを知っている人だけがアクセスできる限定公開も可能

Songmashの実現方法

「マッシュアップ度 (mashability)」に基づく自動生成技術

  • ある入力楽曲を基準として、それに混ぜることが可能な楽曲とそのフレーズの断片を探索し、音の高さとテンポを自動調整して混ぜ合わせる
  • 独自のマッシュアップ度(マッシュアップ可能性)の算出方法を提案
  • ビートとフレーズの解析後に楽曲断片間の類似度を以下に基づき計算

    1. ハーモニーの類似度(調和度)
    2. リズムの類似度
    3. 周波数特性のバランス(スペクトルバランス)
  • 元のフレーズ断片の状態ではマッシュアップ度が低くても、移調とテンポ変更によってどのように自動調整すればマッシュアップ度を最大化して自然に聞こえるようになるかを推定
[M. E. P. Davies, P. Hamel, K. Yoshii, and M. Goto: AutoMashUpper: Automatic Creation of Multi-Song Music Mashups,
IEEE/ACM Transactions on Audio, Speech, and Language Processing, Vol.22, No.12, pp.1726-1737, December 2014.]

Webブラウザ上でインタラクティブな編集を可能にする技術

  • 楽曲配信元サイトから直接音楽再生をする際に、ユーザのブラウザ上でリアルタイムにピッチシフト・タイムストレッチができるエンジンを実装
  • マッシュアップ度だけサーバ側で事前計算しておき、それ以外の多様な編集をブラウザ上で実現できるように実装
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Songmashの目指す世界

新たな音楽発見(推薦)手段としてのマッシュアップ鑑賞・創作

  • 重ね合わせたすべての楽曲断片をリファーすることで、視聴者が楽曲断片に興味を持った際に、それらの配信元サイトへ移動して音楽との出会いを拡大
  • 楽曲断片提供による新たな音楽プロモーション手段への発展可能性を模索

2次創作文化の発展に寄与

  • 従来は手作業での膨大な試行錯誤が必要だったマッシュアップ制作を支援
  • 自分好みにパーソナライズすることでコピー不可能な能動的な体験を提供

ポピュラリティを確保したまま人間が快適に受容可能な複雑度の限界を押し上げることによる音楽の進化の可能性

  • 人々が快適に感じる音楽の複雑度には限界があり、従来は、複雑度を増加すると理解する難易度が高くなりポピュラリティを得ることが困難であった
  • マッシュアップは、聴取者の頭の中に既にある音楽の記憶を参照することによって、ポピュラリティを確保したまま、人間が快適に受容可能な複雑度の限界を押し上げられる可能性がある
  • 電子楽器以前の個々の楽器音を単位とした音楽制作から発展して、技術の進歩により数小節のループ素材を単位とした音楽制作が可能となったが、マッシュアップではさらに進んで、楽曲を単位・素材とした音楽制作を可能にする点で新しく、一から作曲しているときには作り出そうと思えないような複雑な音響信号に到達することが容易になっている

謝辞:
Graham Percival 氏(マッシュアップ度計算のWebサービス用移植実装等)